リツくん
車の断熱について

夏の日差しや冬の寒さ対策として、車の断熱はぜひやっておきたいポイントです。内張りを外したりと手間がかかりますが、やっただけの価値は出てくると思います。
車中泊では結露が非常に起きやすい状況になりますので、内部結露や結露によるカビやボディのサビなど、長期的になるべく影響の出にくい断熱材を選びたいところです。

人は寝ているだけでも汗や呼気などから相当な水分を失っています。
その量は約500mℓにも及びます。(約8時間 約29℃:大塚製薬佐賀栄養製品研究所データ 2000)
起床時や就寝前に|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
2人で寝たら1リットルですね。
熱の移動の3原則
熱の伝わり方には、伝導、輻射、対流の3つがあります。建物内の熱の移動は75%が輻射によるもので、対流が20%、伝導は5%の比率だそうです。
参考 その断熱で大丈夫?断熱材では止められない熱とは岐阜の注文住宅・一戸建ての工務店|無垢Storyの山喜建設車の場合の比率はわかりませんが、建物と同じように輻射熱の影響は大きいと考えられます。
輻射熱の対策
アルミ箔による遮熱

輻射熱を防ぐためには、赤外線などの電磁波を反射するアルミ箔が有効です。
ハロゲンランプの作業灯で簡単に実験してみましたが、作業灯に直に手を近づけるととても熱いですが、アルミホイルを一枚間に挟むだけでほとんど熱さを感じなくなりました。
アルミ箔は夏場の太陽光の対策のほか、冬場に車内の熱を反射して逃がさない効果もあります。
メーカー純正トリムにも採用
日産の一部の車種は、遮熱ルーフトリムとしてトリムにアルミフィルムが貼られています。
遮熱ルーフトリム | 日産|技術開発の取り組み
アルミ箔を使った遮熱材
アルミ箔を使った遮熱材を探してみましたが、建築用のものがほとんどで少量の入手が難しそうです。
建築用のものは断熱材も一体になっていますが、断熱材は別に用意するのであれば、単純にアルミホイルを使うのもよさそうです。家庭用のアルミホイルは薄くて作業中に破れてしまいそうですが、キャンプ用などの厚手の丈夫なアルミホイルがありますね。
アルミ蒸着について

アルミの断熱材というと銀マットが思い浮かびますが、銀マットはアルミ箔ではなくアルミ蒸着というアルミの微粒子を付着させたものです。粒子の間に隙間があり、アルミ箔と比べると反射率が極端に落ちるようです。
エアキャップ (プチプチ)の両面にアルミが付いたものも、安価なものはほとんど蒸着タイプです。災害時に使うエマージェンシーマットも調べた限りアルミ蒸着でした。
断熱材の種類
車に使えそうな断熱材を探してみました。
参考 断熱材の種類と特徴 | 豆知識ブログ豆知識ブロググラスウール
アクリアマット – (住宅用製品|アクリアシリーズ):グラスウール断熱材・吸音材
グラスウールは比較的安価ですが、厚みが薄い物でも50mmあるのでスペースが必要です。袋に入ったタイプも片面は穴があり透湿性があるようです。
厚さと熱抵抗値
グラスウールなどは、柔らかいので押し込めばよさそうに思えますが、熱抵抗値 (熱の伝わりにくさ)は、厚さ÷熱伝導率で出されますので、圧縮することで断熱性能は下がってしまいます。
参考 よくあるご質問| グラスウール断熱材・吸音材のマグ・イゾベール(株)グラスウール断熱材・吸音材 - マグ・イゾベール(株)MAG-ISOVER K.K.シンサレート
3M™の高機能中綿素材。羽毛の毛先のような極細の繊維が複雑に入り組んだ構造で、薄くても高い断熱性を実現しているそうです。
軽量で厚さも薄いものからあるので色々な場所に使えそうです。素材が剥き出しなので湿気の対策は必要と思われます。
サーモウール
羊毛断熱材サーモウール ラインナップ・仕様
サーモウールも厚さが薄いもので50mm程です。
調湿性があるので、内装を丸々作るような場合は結露を防いでくれそうですが、元のトリムの中に入れる場合は、トリムの素材などによって透湿せず、効果が出ないことも考えられます。
押し出し法ポリスチレンフォーム
ホームセンターでよく見かけるスタイロフォーム、カネライトフォーム、ミラフォームなどの断熱材です。ほかに、フェノールフォームなど熱伝導率が低いものもあります。
薄いもので15mmからあります。硬さがあるのでボディの形に沿わせるのは難しいですが、フロアに敷いたり、窓を塞ぐ使い方には適しています。
東レペフ

発泡プラスチック系でもう少し柔らかいものを探すと、東レペフという製品があります。厚さは1mm〜10mmまであるのでドアトリムなどの狭い部分にも使えそうです。ルーフなどは厚めに重ねて貼ると効果が高そうです。
発砲プラスチック系の断熱材は、独立気泡のものが多く湿気を吸う心配はなさそうです。
参考 用語集「独立気泡 連続気泡」株式会社生出東レペフを天井、ドアパネルに施工しました。


使いやすそうな断熱材を挙げてみましたが、このほかに、断熱効果のある塗料もあります。
結露の問題
グラスウールを建物に使うときは、室内側を防湿、室外側は透湿して通気層を設けるようです。車の中では通気層などは現実的ではありません。
防湿層で止まらない内部結露 | 豆知識ブログ
グラスウールもシンサレートも素材自体は吸水性はないようですが、空気層に入った湿気は車内では抜ける場所がなく籠もってしまうのか、断熱材を密封して使えば大丈夫なのか、このあたりはよくわかりません。この点は発泡プラスチック系が使いやすそうです。
リツくん
フロア (床) の断熱
フロア (床)の断熱は、床張りをする前提で考えると、家と同じように根太といわれる床板を支える横木を入れて、その間に断熱材を入れる方法があります。
ある程度厚みのある断熱材が使えるので効果は高いですが、そのぶん車内が狭くなるのがデメリットです。
車内高をできるだけ残す場合は、根太を入れないでフロアに直に、硬質で薄い断熱材をいれることになります。
これに使えそうな素材は、アルミ複合板と呼ばれる発泡樹脂をアルミでサンドイッチしたパネルや、ポリプレートという養生材などがあります。非常に薄いですが多少の断熱効果は期待できそうです。
床張りをしたときに、ポリプレートを断熱材代わりに使いました。

車の制振について
車のボディの制振は車中泊に必須ではありませんが、断熱処理をした後に制振材を施工するのは難しいので、断熱と合わせて行うのがおすすめです。
- ロードノイズ低減など静音性向上
- ルーフの雨音が小さくなる
- カーオーディオの音質向上
- 車が重くなる
制振材の種類
ボディに貼り付けるタイプの制振材を調べていくと、「レジェトレックス」と「レアルシルト」にたどり着くのではないでしょうか。
レジェトレックス
レジェトレックスは安価でよいのですが、説明を見ると0〜40℃で制振効果を発揮すると書かれており、フロアに使うのには問題なさそうですが、車の天井など夏場に高温になる場所は、レジェトレックスが浮いたり剥がれたりして効果が落ちることも考えられます。
レアルシルト

レアルシルトはレジェトレックスに比べ高価ですが、耐熱温度80℃とスペックにあるので、天井などの高温になる場所でも安心です。
レアルシルトを天井に施工しました。

制振シートスタンダード2360

エーモンの制振シートスタンダード2360は、ドアアウター用として発売されているので、耐熱性、耐水性もそれなりにあると考えられます。材質は樹脂系なのでレジェトレックスよりも使いやすそうです。
制振シートスタンダード2360をドアパネル、クォーターパネルに施工しました。

制振材の比較
重量など比べてみました。
製品 | レアルシルト | レジェトレックス | エーモン 2360 |
---|---|---|---|
材質 | オレフィン系改質樹脂 | ゴム系 | 特殊オレフィン系樹脂 |
サイズ / 重量 | 300x400x1.9mm / 400g | 1,000x500x1.5mm / 1,200g | 500x450x1.5mm / 712g |
m2重量 | 3.3kg | 2.4kg | 3.16kg |
サイズ、重量はメーカー公称値のものと実測のものがあります。離型紙の有無など細かな点は不明です。
リツくん
車に使いやすそうな断熱材、制振材を紹介してみました。どれが正解ということはないので、納得のいくものを選んでください。